健やかに生きるために

いつも胸の中にあること

弓なりの形をしている日本は、東西にも南北にも長く、気候も風土もその土地、土地で異なります。それぞれの地域の気候、風土に育まれ、受け継がれてきたものが郷土料理です。しかし、食が豊かになると人は、食べたいものだけを食べるなど食の偏りが生まれ、ライフスタイルの変化とともに子どもたちの食にも乱れが生じるようになりました。
そうしたなか、苦労が実りそのスタイルを確立した「和食薬膳」が注目されるようになると、講演会や料理教室の講師としてお招きをいただくことが多くなりました。依頼を受けて全国各地に赴くとき、いつも私の胸にあるのは「健やかに生きるためには、どうすればよいのか」ということでした。

和食薬膳が内包するもの

高齢社会のこれからを思うとき、私は病気を予防し、体力と気力を補うことができる食生活こそが「健やかな暮らし」を手に入れることができる切符だと考えます。 長い歴史に裏打ちされた中国薬膳に、日本の大地の恵みと日本料理の美しさとおいしさを融合させた滋味深い「和食薬膳」は、いただくほどにその滋味深い味わいが一人ひとりの五臓六腑に染みわたり心と身体に元気を届けます。食育ということでは、子どもたちにお手伝いしてもらいながらの下ごしらえや笑顔がこぼれる食卓が、大切な学びの場になります。経験した味、匂い、食感、温もりの全てが生涯にわたって子どもたちの背中を押し続けることになるでしょう。同時に、自分たちのまちの「和食薬膳」を軸に地域の活性化、町おこしにつながるような商品開発などの話し合いがなされ、実現されていけば、皆さんの生き甲斐、働き甲斐も生まれてくるはずです。 多くの伸び代を内包する「和食薬膳」が、皆さまの「健やかな暮らし」を支え、食べ継がれていくことを願いながら私は、これからも日々精進し続けていきたいと思っています。

福島市 割烹 萬清にて

地域の皆様と共に和食薬膳で健やかな暮らしを応援しています。

静岡新聞 1996年12月10日掲載

1998 SETEMBER Arteryより

福島民友 2011年1月29日掲載